悲しいのにハッピー。(ソニー・スティット)
お気に入りのジャズ・プレイヤーのCDを買った。
クリフォード・ブラウン
「クリフォード・ブラウン・モア・メモラブル・
トラックス」、
ソニースティット
「コンストレーション」、
「ソニー・スティット・ウィズ・ジャック・マクダフ/
スティット・ミーツ・ブラザー・マクダフ」、
「37ミニッツ48セカンズ」、
である。
今はどれも中古レコード屋でしか手に入らない。
売れるものしか再発しないという結果だろう。
こういうのは見たときに買わねば。
今回はそのソニースティットの話だ。
彼は演奏があまりにチャーリー・パーカーに
似ているということで、チャーリー・パーカーが
生きている時はアルト・サックスを捨てざるを
得ず、テナー・サックスを中心に活動した。
ジャズ・プレイヤーとしては一流のものを持ちながら
革新的なものがないからか、決して正当な評価は
受けなかったという。
しかしそんなことは感じさせないくらい
ソニー・スティットのサックスはハッピーだ。
吹くのが楽しくてたまらないという感じだ。
そういう演奏が気に入って集めている。
そのソニー・スティットでさえも時代の流れ
には逆らえず、フュージョンのアルバムを
出さなければならなかった。レパートリーも
ジャズのスタンダードではなく、1973年当時の
ヒット曲で固めたアルバムが
「ミスター・ボージャングルズ」だ。
ここでのソニー・スティットは自分なりに消化して
良質なフュージョン・アルバムを作っている。
アルト・サックス中心で演奏しており、
「ミスター・ボージャングルズ」、
「世界はゲットーだ」、
「やさしく歌って」などいつもとはまったく違う
レパートリーをしていても、そのハッピーさは変わって
いない。
ただアドリブになるといつものような音の激流と
なり、演奏曲目は変われどもスピリットは
本格ジャズを演奏している時と変わっていないぞ
といっているようだ。
ローランド・ハナのエレクトリック・ピアノ、
コーネル・デュプリーのギター、
リチャード・ディヴィスのエレクトリック・ベースが
フュージョンの初期の頃のいい雰囲気をかもし
出している。
その上フルートやフレンチホルン、ヴィブラホーン、
さらにドン・セベスキー指揮のストリングス入りで
フュージョン・アルバムとは思えないくらい豪華で
せいたくなサウンドになっているのがスゴイ。
個人的にはマイケル・ジャクソンの歌で有名な
「ベン」をオススメする。
ジャケットもいつものアーシー(泥臭い)な感じから、
オシャレな感じになっているのがいい。
タップダンサーの格好だというが、裏面のジャケットを
みるとミュージカルスターのようで、今にも歌って踊り
そうだ。ジャケットはアルバムの曲目とは直接関係
なさそうだが、彼のサックスは十二分に歌って
踊っている。
そんな上質のアルバムなのだが、他で取り上げられ
見たことがない。想像するに、今度は
”スティットらしくない”
”本格派ジャズでない”
ということで埋もれて言ったのではないか。
全くジャズ・ファンというのは勝手なものだ。
実力がありながら不幸である。
最後のライブは日本で、その時は末期のガンに
おかされていて、まともに吹けなかったそうだ。
それでも本格的なジャズを受け入れてくれる
”日本”という国を愛し、文字通り命をかけて
来日したのだ。
帰国後数日で彼は帰らぬ人となった。
悲しいくらい不幸な人生だが、
その人生を感じさせないくらい彼の演奏は
ハッピーである。
サックスが吹けて、レコーディングできて
アルバムが出せれば彼はハッピーだったのだろう。
ソニー・スティットは58歳の生涯で100枚以上の
アルバムを残している。
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